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「寒」と「温」の概念(その2)

比熱と水について
今回は,「水」の事について,少し考察します。前回,温度のことを,少し書きましたが,温度はその物質の比熱により規定されます。比熱とは1gあたりの物質の温度を1度あげるのに必要な熱量のことです。水そのものの比熱は,地球上で1番高いため,つまり,言い換えれば,地球上で一番,温めにくく,冷えにくいものだということです。この水が体に入ってくると,温めるものがあまり体にはありませんから,冷えてきます。ということは,水が溜まりやすいものを摂取すれば,必然的に「冷え」が生じてきます。組織に水を引き込むものとしては,甘味類(おやつの他にくだものも入ります),牛乳(乳糖が原因のようです),醸造酒(ビール,日本酒,ワインなどの糖質が入っているお酒)などがあります。よく,薬の副作用に浮腫と書いてあるものがありますが,これらの西洋薬もやはり,結果的に体を冷やす原因となるのです。

「寒」と「温」の概念(その1)

遺伝子治療やクローニングまで突き詰めた現代医療において全く欠落している病態概念の1つが、この「寒」「温」の考え方です。現代治療法の中の整形外科領域や皮膚科領域で、わずかながら温めたり、冷やしたりする治療法が存在しますが、それ以外の領域では、特殊な場合を除いて(体を冷やすことで、臓器障害を食い止める治療法が、脳外科や心臓外科、移植外科領域では行われています)あまりお目にかかったことはありません。
医学部に入って、医者らしい勉強を始めるとき、「生化学」という生体の現象を化学現象で解明していく勉強をしますが、この中でも、まず始めにでてくる単元が、「酵素学」です。人間の生命維持現象は、ほぼ全て化学反応に依存しています。この化学反応の反応速度を調節するのが、「酵素」の働きとされ、この酵素の働きは、主として、反応が起こる温度により規定されています。簡単に言ってしまえば、つまるところ、温度によって全ての機能が調節されていると言っても過言ではありません。なので、体温がどの程度あるかは、その人の生命現象を主る最も重要な因子となります。この温度の概念は、東洋医学的には、西洋医学が始まる2000年以上前からすでに、寒と温という概念で、治療に組み込まれていました(続く)。

乳腺炎と断乳と炭水化物制限食

京都の高雄病院から始まった糖尿病の新しい治療法として,炭水化物制限食というのがあります.以前にも,このブログでご紹介しましたが...
現在当院でも糖尿病で治療されている方は,多かれ少なかれ,この治療のおかげで,インスリン投与量を減量できたり,すごい患者さんだと,インスリンをはずせたり,抗糖尿病薬を飲まないでもいられる程度までになっている,すごい治療法なのです.
話は飛びますが,もともと私は,消化器外科医として勤務していたときに,すでに感じていたのですが,患者さんに糖質制限をかけて頂くと,体の炎症反応が激減し,傷の治り具合もとてもきれいになるのです.
そんなこんなで,高雄病院の先生も糖尿病の治療に炭水化物制限食を使われていると聞き,いまでは,当院でも,この治療法を導入して,治療しているわけです.
今回は,この炭水化物制限食を,炎症反応の強くでる,授乳中の患者さんの乳腺炎に応用し,炎症の治り具合を患者さんに観察して頂きました.やはり,以前の乳腺炎に比べると,治りが早いとの,コメントをもらいました.この患者さんが,今度は断乳するとのこと...
やはり,炭水化物制限食に変更して頂いたところ,乳汁分泌もだいぶ抑えられるようです.断乳でお困りの方は,ぜひ,お試し下さい.
ところで,今日,生薬の本を読んでいたら,「淡豆豉(たんとうし)」というのが,でてきました.わかりやすく言えば,納豆のことです.この生薬の解説に乳汁分泌抑制効果があると記載されていました.これも,手軽に手に入る食品ですから,断乳時・乳腺炎時には試してみて下さい.

皆さん,冷やしすぎです!

今日は,この暑い中,往診が8件もありました。往診先の家に入ると,決まって冷房がガンガンかかっていて,「さむーい」んです。皆さん,冷やしすぎです!
冷え症の方はもとより,癌の患者さんも,基礎免疫能が落ちてしまいます。癌にとっても好都合な環境を提供してしまいます。冷え症の方は,肩こりが強くなったり,腰痛がつらくなったり,はたまた血圧まで上がってしまいます。これで,血圧の薬を増量するようでは,本末転倒ですよね。
湿温は30度ぐらいでもよいです。扇風機を併用して,くれぐれも体を冷やしすぎないよう気をつけましょう!

手の黄色い方へ

最近の健康ブームにのって,野菜ジュースを毎日取っている方に,このような,「手の黄色い方」が多く見うけられます.「黄色い」犯人は,この野菜ジュースに多量に含まれている,「カロチン」です.高カロチン血症という状態になっているのです.カロチン(=ビタミンA)には,レチノールとβ-カロチンの2種類があります。レチノールは、レバーやウナギなどに含まれており,ビタミンA活性(視力,発毛,免疫機能強化,粘膜脇下,抗酸化作用,抗癌作用等)があります。β-カロチンは、主に緑黄色野菜などに含まれており、体の中でビタミンAに変換されます。β-カロチンは体内で必要なだけビタミンAに変換されますが、一方,サプリメントとしてよく供給されるレチノールは,脂肪に溶解蓄積するため,摂りすぎるとビタミンA過剰症となります。ビタミンA過剰症の症状としては,食欲不振,皮膚落屑,脱毛,皮膚乾燥,骨・関節痛,肝脾腫,皮膚色素沈着,胎児奇形,脳圧亢進,易刺激性,骨痛等がありますが,β-カロチンは過剰症をおこさないと言われています。ただ,手が「黄色く」なります.
問題は,むしろ,野菜ジュースがもつ,糖質にあります.この多飲では,糖質の負荷が著明なため,体に水を貯留するような「水毒(体の浮腫み,目眩)」という状態になり,また,関節部や古傷において,特に水の貯留が起こりやすくなり,関節痛が出現してきます.天気が悪くなると,古傷が痛むような方はいませんか?
何事も,過ぎたるは及ばざるがごとし,です.手が黄色くならない程度に摂取するのが,無難なところだと思います.

「夏ばて」にご注意を!

毎日暑い日が続いていますが,皆さんどのように乗り切っていますでしょうか?
暑いので,つい,アイスクリームを毎日欠かさず食べたり,今が旬の,「もも」を毎日ほおばったり,はたまた,テレビでガンガン宣伝しているような,「スポーツドリンク」「栄養剤」の類をグイグイ飮んでみたり。。。。。こんな状態を毎日続けていると,体に水が溜まってきて,「水毒」という状態が出現します。めまいがしたり,気持ち悪くなってみたり,足がパンパンに張ってむくんでみたり。そして,体がだるくなって,何にもしたくない,いわゆる「夏ばて」の状態となります。
夏ばての原因は,やはり,口に入れる「甘い物」が原因となっていることが多いため,十分注意しましょう。

「めまい」と「湿気」と「甘い物」

最近,「めまい」を訴えて来られる患者さんが増えています.「めまい」の起きるのには,いろいろ原因があります.物理的な(解剖学的な)原因は,耳鼻科や脳外科の専門医の先生に治療をお任せすることにして,今日は,機能的な,西洋医学的なアプローチではなかなか症状の取れない「めまい」について,簡単な予防法・治療法を伝授したいと思います.
もともと耳の前庭という部分が平衡感覚を感知している部分で,この中にある,炭酸カルシウムでできている耳石器の動きで、私たちは,体の平衡状態を感じ取っています。この耳石器は三半規管の中にあり、三半規管の中はリンパ液で満たされています.体の「水」が過剰になると,このリンパ液の流れの状態に変化を生じ,このために「めまい」が生じてくるようです.
最近のように,じめじめした湿度の高い時期に起こりやすくなる「めまい」は,体の「水」のバランスが崩れて,体の保湿量が多くなる事による「めまい」がほとんどです.この時期には,もともと,湿度が高いため,私たちの体に,「水」が皮膚を通して入ってきます.このため,この時期には,「水」を介した症状が多く出現しやすくなります.この過剰な「水」により三半規管のリンパ液の流れにも異常が生じ,「めまい」となるようです.つまり,体の水分量が,ほどよい状態を保つことが,この「めまい」を生じさせないコツなのです.
体の中に,水をため込みやすいもので,代表的なものは「甘味類」「塩分」「解熱鎮痛剤」です.この時期には,特に摂取するものに気をつけましょう.

疲れているときの食事の取り方

このブログを見られている方で,入院されたご経験のある方はいらっしゃいますか?
私の研修医時代には,お金もなく(今もあまり当時と状況はかわらないのですが(^_^;)),手術の合間に,病院の職員食堂で食べるお昼ご飯が唯一の楽しみでした.そのお昼ご飯は,病人食で,なんとも元気な若者には,お腹に力が入らなそうな,すぐお腹が減りそうな食事ばかりでした(*_*).病院もお金がないのか,こんなところで,節約しているのかと,若干腹立たしくなることもしばしば(-.-#).と,思っていたのですが,今考えてみると,あの病人食にも一応,理由があったのが,後でわかったのです.
私たちが生活している中で,意外に変な勘違いをしていることがままありますが,食事のことでもちょっと考えてみるとおかしいことがあります.私たちは,仕事などでくたぶれたりすると,「栄養のある物をとって,元気になろう」という,「変な理屈」が頭の中をよぎります.この考えが正しければ,病院で出される食事は,毎日ステーキやウナギ,はたまた,すしなんかが出てきても,おかしくはないのですが,病院でそのような食事をだすところを見たことがありません(たまに,ホテルのような料理を出す病院があるようですが,例外的なものと考えた方がよさそうです).もちろん,そんなお腹に重い物を出されたら,患者さんは,消化吸収できないからです.食事は,口の中に入れれば,すべて身になるのではなく,肉がすぐに肉になるのではなく,まず,体に吸収されるためには,分解される必要があります.その分解に,実は,相当なエネルギーを生体は使います.なので,重い物を食べると,くたぶれるのです!決して,元気が出る状態にはなりません.皆さんのご経験でもあると思いますが,夜,たらふく食べた後,翌朝,体が妙に重たく感じたことはありませんか?この状態が,消化にエネルギーを使ってしまった状態です.
つまり,病気の時や,体が疲労しているときには,ステーキではなく,おかゆのような,すぐに,体が吸収できるようなものを,お腹に入れた方が,早く回復するのです.同様に,疲労しているときには,もちろん,免疫機能が低下していますから,できるだけ,「外食」や「さしみ類」は避けた方がよさそうです.どちらも,お腹に重いものですし,感染する機会が増える傾向があります.
最近,私の外来にも,「食あたり」の方が増えてきています.特に,疲労して,お腹に実力以上のものが入ったときに起きているようです.
というわけで,疲労したときには,お腹に優しいものを「少量」入れてください.元気になったら,ステーキでも,なんでも食べてくださいね(^o^).